2025.10.31

【社員インタビュー】CO2は農業を支える”資源”?!みかんプロジェクトのリーダーである田中貴史が語る、地元CO2と蒲郡市のCO2循環

【社員インタビュー】CO2は農業を支える”資源”?!みかんプロジェクトのリーダーである田中貴史が語る、地元CO2と蒲郡市のCO2循環

技術開発の第一線から、新規事業の挑戦へ

かねまき: 本日はお忙しい中ありがとうございます!早速ですが、まずは田中さんのこれまでのご経歴について、簡単にお伺いしてもよろしいでしょうか?Niterraではどのようなお仕事をされてきたのですか?

田中さん: はい。入社してから10年以上、ディーゼルエンジンに使われる「グロープラグ」という部品の実機評価を担当してきました。そこから、「何か新しい事業に挑戦したい」と思い、新規事業分野へ異動して、リチウムイオンバッテリーやデシカント空調など、様々な製品開発に携わってきました。

環境問題を「自分事」として捉えるようになった衝撃的な出来事

かねまき: ずっと技術開発の第一線にいらっしゃったんですね。これまでのご業務の中で、現在の『地元CO2』の活動や『新規事業創出』に繋がるような経験、またはご自身の問題意識などはありましたか?

田中さん: はい。まさに環境問題を「自分事」として捉えるようになった出来事があります。私には子供が3人いるのですが、夏の気温が高すぎて、子供たちが夏休みにプールへ行けないんですよ。私が小学生の時は、夏休みといえば当たり前のようにプールに行っていたので、それを知ったときにすごく衝撃を受けまして…。そこから、地球温暖化をはじめ、環境問題を「自分事」としてとらえるようになりました。

かねまき: お子さんたちの実体験が原点にあったんですね。そんな中で、今回『地元CO2』という新しい取り組みに参画されることになった経緯を教えていただけますか?

田中さん: ちょうど違う新規事業の部署にいた際、隣でやっていたCO2回収の取り組みについて、梶谷さん(カーボンリサイクル開発部部長)川瀬さんから話を聞く機会があったんです。もう、彼らの思いが本当に熱くて。それに強く共感して、「ぜひ一緒にやらせてください!」と飛び込んだのがきっかけです。

かねまき: 熱意に引き寄せられたんですね!では、その思いをかたちにするために、具体的にどの地域の、どんな課題に着目されたのでしょうか?

田中さん: 環境問題って、自社だけでできることには限りがあると感じていたので、とにかく色々な方と繋がって実現していくべきだと考えていました。多くの自治体や企業さんとお話をする中で、蒲郡市さんとは「あ、この人たち、俺たちと考えがすごく似ているな」と感じて。「ぜひ蒲郡さんと何かやりたい!」と強く思っていたんです。 そこで蒲郡市さんの課題を伺うと、「ハウスみかんの跡継ぎ問題」がある、と。これに対して、環境に配慮した新しい農法として、我々のCO2循環技術が使えるのでは?とピンときたんです。

かねまき: なるほど、蒲郡市さんとの出会いをきっかけに、具体的な課題と解決策が「ピンときた」わけですね。そして、その『みかんプロジェクト』でリーダーを務められることになった経緯についても、ぜひお聞かせください。

田中さん: プロジェクトが始まる前から、蒲郡市さんとの窓口になったり、地元の農家さんにヒアリングに回ったりしていたのが私だったんです。そうやって皆さんの思いを直接聞いて深く共感していたので、「これはもう、自分がやるのが一番良いはずだ」と。それでリーダーを引き受けることにしました。

「役割範囲を飛び越えて」チーム全員で乗り越えた最大のピンチ

かねまき: プロジェクトを進める上で、一番大変だったこと、苦労されたのはどんなことでしたか?

田中さん: うーん…やっぱり、我々にとって何もかもが初めての設備導入だったので…。もう、次から次へと課題が出てきて、スケジュール通りに進まない。その結果、パートナーの方々にご迷惑をおかけしてしまったのが、本当に一番大変でしたね。

かねまき: その困難を、チームでどのように乗り越えられたのですか?

田中さん: 装置の設計・製作がスケジュールから大幅に遅れてしまったのですが、もうチーム全員が「自分の担当はここまで」なんて言ってられなくて。全員が役割範囲を飛び越えて協力して、総出で設備の立ち上げをやり遂げました。あれは本当にチームの力ですね。

かねまき: チーム一丸でやり遂げた、と。今だから笑って話せるような、失敗談などはありますか?

田中さん: あ〜、ありますね。ハウスみかんを育てていただいた農業総合試験場さんのハウスが、結構な坂の上にあったんですよ。そこへCO2が入ったドラム缶をトラックで運ぶんですけど、坂が急すぎてトラックが登れなくて。 もう最後の最後まで対策に追われていました。「滑り止めのゴムマットを敷いたらどうだ」って試したんですけど、今度はトラックのタイヤの摩擦でゴムマットが滑って飛んでいっちゃって。その時は「あぁ、現場って難しいなぁ…」と改めて思いましたね。

たった1時間の収穫で汗だく。身をもって知った農家さんの苦労

かねまき: そんなご苦労もあって、今回のプロジェクトでは、農業試験場の方と一緒にみかんの収穫までされたと伺いました。普段の業務とは全く違う体験だったと思いますが、いかがでしたか?

田中さん: ハウスみかんの育成って、ダニ対策の消毒や、枝の剪定(せんてい)、1本の木につけるみかんの数を管理する「摘果(てきか)」など、想像を絶する作業量なんです。また、たった1時間程度のみかんの収穫だけでも汗だくになってしまって…。農家さんのご苦労を身をもって体験できました。

かねまき: 逆に、このプロジェクトをやっていて『本当に良かった!』と感じた、一番嬉しかった瞬間はいつでしたか?

田中さん: それはもう、竹本油脂さんの工場から回収したCO2を、初めてハウスみかんに施用したときですね。我々の構想が、仲間と一丸となって初めて「かたち」になった瞬間です。もう、めちゃくちゃ嬉しかったです。 しかも、施用が朝一だったんです。みんなで蒲郡市の美しい朝焼けを見ながら、「やったな!」って喜びを分かち合って。あの光景は、この先もずっと忘れないと思います。

信頼関係の鍵は、市の「土壌づくり」と「真摯な意見交換」

かねまき: 素敵なお話です。プロジェクトを進める中で、地域の方(みかん農家さんなど)とは、どのように信頼関係を築いていかれたのでしょうか?

田中さん: これは本当に、初めに蒲郡市さんが私たちを紹介してくださったのが大きかったですね。「市が言うなら」と、皆さんがまず話を聞いてくださる土壌を作っていただいて。その上で、私たちも真摯に相手方の意見に耳を傾けて、何度も何度も意見交換を重ねました。 初めてのみかん収穫には、蒲郡市の方やJAの方も「手伝うよ!」って来てくださって。その時に、「あぁ、良いパートナー関係になれたんだな」って実感できました。

かねまき: このプロジェクトを通じて、田中さんご自身の中に生まれた最も大きな『変化』は何だと思いますか?

田中さん: うーん、やっぱり「最後までやり抜いた」こと、ですかね。正直、「日特(Niterra)がみかんを育てるなんて、なんで?」っていう社内の声も多かったと思うんです。でも、関係者みんなを巻き込んで最後までやり抜いた結果、中京TVさんにも興味を持っていただいて、取材に繋がりました。 進めていく中で困難は本当に何度もあったんですけど、最後まで諦めずに実行できたことが、多くの方に活動を知ってもらう、という成果に繋がったんだと思います。

かねまき: 現在はみかんプロジェクトを離れ、『地元CO2』内の技術のお仕事をされているとのことですが、具体的にどのような業務をされているのでしょうか?

田中さん: 現在は、CO2回収装置の評価と品質に関わる仕事をしています。お客様に製品をお届けする立場として、安心・安全に使っていただけるような製品づくりに取り組んでいます。

かねまき: 一度、畑の違うプロジェクトを経験されたことで、ご自身の専門である技術の仕事に対する見方や考え方に何か変化はありましたか?

田中さん: まさにありました。現場での立ち会いやトラブルの連続を経験したことで、製品の品質に対して、ますます強く意識を向けるようになりましたね。

かねまき: 田中さんご自身の今後の展望や、挑戦してみたいことがあれば教えてください。

田中さん: これまで「ごみ」であったCO2が、資源として循環していく世界を作っていきたいです。そのために、CO2を循環させて作られた製品が「価値あるもの」として生活者の皆様に認めてもらえるよう、PR活動も含め、真摯に皆さんと向き合っていきたいと思っています。

最も大きな変化は「最後まで諦めずに実行できた」という経験

かねまき: 田中さんのように、現在の業務とは異なる新しい挑戦をしてみたいと考えている後輩や同僚に、ご自身の経験から伝えたいメッセージやアドバイスはありますか?

田中さん: そうですね。新しいことへの挑戦って、もう困難の連続なんですよ。失敗もいっぱいすると思うんです。でも、諦めたらそこで「失敗」が確定しちゃう。諦めずに行動し続ければ、それは全部「経験」になって、自分の成長に繋がります。 やらないと、何がわからないのかさえわからないまま。だから、とにかく一緒に行動し続けましょう!と伝えたいですね。

かねまき: 最後に、この『地元CO2』の活動を、今後どのように発展させていきたいとお考えですか?

田中さん: まずは、どこか特定の地域で、経済性を持ってCO2が循環する仕組みを実現したいです。

かねまき: プロジェクトの裏側にある熱い思いと、困難を乗り越えた行動力、そして未来への展望まで、本日は貴重なお話を本当にありがとうございました!

プロフィール

田中 貴史

日本特殊陶業株式会社 エネルギー事業本部 カーボンリサイクル開発部 CCU技術課 主任

2008年日本特殊陶業入社。自動車関連事業部に配属され、グロープラグの開発に従事。2022年より地域でCO2を活用する地域CCU構想の立ち上げメンバーとして参画。