2025.08.01
【社員インタビュー】CO2は海の幸を育む”栄養源”?! 開発担当・梁川貴行が描く、地元CO2で創る養殖の新たな可能性。
【社員インタビュー】CO2は海の幸を育む”栄養源”?! 開発担当・梁川貴行が描く、地元CO2で創る養殖の新たな可能性。
こんにちは!地元CO2ブランディング担当のかねまきです。
「地元CO2」では、CO2を利用するための様々な挑戦が行われています。今回はその中から、『海藻と貝の複合陸上養殖』に取り組んでいる梁川貴行さんにインタビューしました!
このプロジェクトは、CO2を吸収させて育てた海藻を高級貝の餌として活用し、さらにはその貝殻までアップサイクルすることを目指した画期的な構想です。
なぜ自動車部品メーカーとして知られるNiterraが養殖を? 生き物を相手にする難しさとは? そして、私たちがその貝を食べられる日は来るのでしょうか。
素朴な疑問から、プロジェクトの未来まで、たっぷりとお話を伺ってきました。
まずは、富山県入善町で行われているプロジェクトの様子を動画でご覧ください。
いかがでしたでしょうか。それでは早速、このプロジェクトを推進する梁川さんご本人に、詳しいお話を伺っていきましょう。
かねまき:本日はよろしくお願いします!まず、梁川さんが現在どのようなお仕事をされているのか、簡単に自己紹介をお願いします。
梁川:よろしくお願いします。私の役割は主に2つあります。ひとつは、プロジェクトで生まれた新しい技術やアイデアを知的財産として守る管理業務や、CO2排出量を可視化する技術開発など、事業の土台を支える仕事です。そしてもうひとつが、今回の『海藻と貝の複合陸上養殖』のように、CO2を有効活用する具体的なプロジェクトを推進することです。

CO2で海藻を育て、その海藻で貝を育てる
かねまき:『海藻と貝の複合陸上養殖』・・・聞くだけでワクワクしますね。早速ですが、そのプロジェクトについて詳しく教えてください。
梁川:はい。これはCO2の新たな使い道を開拓する取り組みです。まず、海藻を育てる際にCO2を供給することで、光合成を活発にします。そうすると海藻の成長が速まり、収穫量を増やすことができる。この過程でCO2は海藻自身に取り込まれ、「固定」されるわけです。
かねまき:「固定」と聞くと少し難しく聞こえるのですが…ビニールハウスで野菜や果物を育てる時に使うことと同じ理屈ですか?地元CO2でも温室みかんを育てていますよね。
梁川:その通りです。植物の光合成をCO2で後押しする、という基本原理は全く同じです。ただ、このプロジェクトを事業として考えたとき、そこからもう一段階、ステップが必要になります。
かねまき:次のステップ、というと?
梁川:はい。海藻単体での市場規模は、正直なところそこまで大きくありません。そこで、育てた海藻をアワビのような高級な貝の餌にすることで、より価値の高いものを生み出し、事業として成立させようというのが、この「複合養殖」の狙いなんです。
かねまき:動画では『アオサ』と『トコブシ』が紹介されていました。これらを選んだのには、何か理由があるのでしょうか?
梁川:はい。新しい挑戦ですので、まずは「手堅い」組み合わせから検証を始めました。アオサはCO2で効率よく成長することが研究で報告されていましたし、アオサを餌にしたトコブシの陸上養殖は、東京都の施設で実績があったんです。
かねまき:なるほど、まずは成功事例を参考にされたのですね。
梁川:ええ。現在は、より事業性を見据えて、高値で取引される「スジアオノリ」や、皆さんもよくご存じの「アワビ」へと対象を広げて検証を進めているところです。

プロジェクトの舞台裏:なぜ、その場所で?
かねまき:そのプロジェクトの舞台として富山県入善町を選ばれたのは、なぜですか?
梁川:このプロジェクトは、海藻養殖の知見が豊富なフルハシEPO様との共同実証です。そのフルハシEPO様が、以前から入善町で「海洋深層水」を使った研究をされていたこと。そして、地元の入善漁協様も、同じ海洋深層水で長年アワビ養殖を手がけてこられたこと。私たちの構想を実現するための技術とノウハウ、そして素晴らしい水が、すべてこの場所に揃っていたんです。
なぜNiterraが「養殖」を?
かねまき:それにしても、Niterraといえば自動車部品メーカーのイメージが強いので、正直、「なぜ養殖?」と意外に感じました。
梁川:よく言われます(笑)。でも実は、グループ会社の「Niterra AQUA」では、自動車部品開発で培った技術を応用して、『うるみえび』というブランドエビの陸上養殖を手がけているんです。
かねまき:たしかに!うるみえびは社内でも時々耳にします。
梁川:ですから、社内に「養殖のプロ」がいたのは心強かったですね。ただ、彼らとはプロジェクトの出発点が異なります。私たちはあくまで「CO2の有効活用」という目的から始まっているので。将来的には、何か技術的に交わる部分も出てくるかもしれません。
かねまき:パートナーのフルハシEPO様とは、どのような経緯で連携することになったのですか?
梁川:まさに「ご縁」でした。当時、フルハシEPO様は陸上養殖の知見を新しい事業に、私たちはCO2回収技術を地域で活かす方法を探していました。そんな両社を、中部経済産業局様が「面白い組み合わせになるのでは」と紹介してくださったのがきっかけです。私たちの「地域で資源を循環させる」という構想に、強く共感いただけたのが決め手になりました。
プロジェクトのリアル:生き物相手の難しさと面白さ
かねまき:動画では、冬場に海藻が育たなくて大変だった、というお話もありました。
梁川:あれは本当に予期せぬ事態でした。入善の海洋深層水は、年間を通じて水温が12℃〜15℃に保たれている、はずだったんです。ところが、屋外の水槽へ水を引くパイプが冬の外気で冷やされ、想定以上に水温が下がってしまって。
かねまき:それは生き物の生育に大きな影響を与えそうですね。
梁川:はい。それに加え、富山の冬は日照時間も短い。水温低下と日照不足のダブルパンチで、アオサが全く育たなくなってしまったんです。「これはまずい」と、急いで水槽を室内に移し、照明で光を補うことで、なんとか冬を越しました。工業製品と違い、マニュアル通りにはいかないことを痛感しましたね。
かねまき:まさに生き物相手ならではですね。逆に、日々の成長で感じる喜びはありますか?
梁川:毎日が発見の連続です。海藻は、その日の天気や水温でCO2の吸収量が変わるので、その調整が大変です。今は新しいパートナー企業と、その供給を自動化する仕組みを開発中です。貝も面白いですよ。日によって食欲にムラがあったり、成長に個性が出たりするのを見ると、「ああ、生き物を扱っているんだな」と実感します。日に日に動きが力強くなっていく姿には、大きな喜びを感じますね。
未来への期待:この貝、食べられますか?
かねまき:では、読者の皆さんが一番気になるであろう質問をします。このプロジェクトで育った貝を、私たちは食べられる日は来るのでしょうか?梁川さんは既に試食されましたか?
梁川:はい、食べました。ただ、お恥ずかしい話、このプロジェクトを始めるまでトコブシを食べたことがなかったんです。稚貝の仕入れ先にご挨拶に行った際にそう話したら、「食べたこともないのに作ろうとしているのか!」と苦笑いされまして(笑)。
かねまき:それは驚かれますね(笑)。お味はいかがでしたか?
梁川:その場で「これが一番美味しい食べ方だよ」と、水槽から出したばかりのトコブシをレンジで1分温め、醤油を数滴垂らしただけのものを頂いたんです。それが、アワビに匹敵するほどの美味しさで…。衝撃的でした。
かねまき:それは最高の体験ですね。
梁川:ええ。ちなみに海藻も、アオサは独特の苦みが良いアクセントになりますし、スジアオノリは香りが素晴らしいです。今はイベントでの試食などを検討中ですが、まだ試験段階ですので、安定的に食卓にお届けするには、もう少し時間がかかりそうです。
かねまき:動画の最後で紹介されていた『貝殻のアップサイクル』も大変興味深かったです。このアイデアはどこから生まれたのですか?
梁川:私たちが目指す「地域での資源循環」を突き詰めた結果です。「CO2を再利用しても、すぐに捨てられるものに使っては意味がない」というご意見もいただきます。それなら、廃棄されるはずの貝殻を、食器のような長く使えるものに生まれ変わらせれば、炭素を固定できる期間も長くできるのではないか、と考えたんです。アワビやトコブシの貝殻の内側は、真珠層が美しく光るので、この特徴を活かして付加価値の高い製品を生み出したいですね。

まとめ
かねまき:この実証実験が成功した先には、どのような事業展開をイメージされていますか?
梁川:まずは小規模でも、生産から販売まで一貫して行えるサプライチェーンを構築することが目標です。それができたら、生産規模をスケールアップさせて量産段階へ移行したい。その過程で、様々な企業様とコラボレーションし、「地元CO2」の輪を広げていきたいですね。
かねまき:最後に、このプロジェクトを通して梁川さんが実現したい『未来の姿』をお聞かせください。
梁川:少し大きな話になりますが、現代の便利な生活は、少なからず地球環境への負荷の上に成り立っています。私たちはその豊かさを手放すのではなく、地球への負荷を減らしながら、豊かであり続ける道を探りたい。今回のプロジェクトは、CO2の有効活用と私たちの“食”を両立させる、そのための挑戦の一つです。私が描きたいのは、経済的な豊かさと地球環境が共存できる、循環型の社会。次の世代が安心して暮らせる社会の礎を、少しでもこの手で築くことができればと思っています。
かねまき:素晴らしいビジョンですね。それでは、読者の皆様へメッセージをお願いします。
梁川:「地元CO2」の取り組みにご興味をお持ちいただき、ありがとうございます。この挑戦は、CO2を“厄介者”から、地域を元気にする“資源”へと変える試みです。しかし、これは私たち一社だけでは決して成し遂げられません。地域の皆様、企業の皆様、多くの仲間がいてこそ、形になります。今後も活動を発信していきますので、もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお声がけください。一緒に、地球と共存できる豊かな未来を創造していきましょう。

プロフィール
梁川 貴行
日本特殊陶業株式会社 エネルギー事業本部 カーボンリサイクル開発部 カーボンデザイン課 主任
2008年日本特殊陶業株式会社に入社。知的財産部に配属され、自動車関連製品の出願/権利化に従事。地域CCU構想が立ち上がった2021年からPJメンバーとして参画。